あの長年に渡る議論が終結を迎えた。ナノティラヌスはティラノサウルスの幼体だった。 | 恐竜化石に関するコラム【三葉虫,アンモナイト,サメの歯】

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2020年のはじめ、長年語られてきたあのホットなトピックがついに終結を迎えました。

2020年のはじめ、長年語られてきたあのホットなトピックがついに終結を迎えました。

小型のティラノサウルス科に分類される恐竜「ナノティラヌス」は、新種なのか、それともティラノサウルス・レックスの幼体なのか……。化石コレクターなら、一度は耳にしたことがある議論でしょう。

このたび、新たな研究成果が発表され、長年続いた論争に結論が出ました。

ナノティラヌスという独立した属は存在せず、ティラノサウルス・レックスの幼体である、という内容です。

この議論は30年も続けられてきました。

この熱い議論は、じつに30年以上も続いてきました。

1980年代には両者の主張は拮抗していましたが、2001年になると状況は一段と白熱します。ニックネーム「Jane」、カタログナンバー「BMRP 2002.4.1」として知られる骨格標本が発見されたからです。

ジェーンは2001年、モンタナ州南部のヘルクリーク層で見つかりました。復元された全長は約6.5メートルで、最大級の標本であるスー(Sue)のほぼ半分。体重は1トン前後と推定されます。体格だけ見れば、ティラノサウルス・レックスの幼体(あるいは亜成体)と捉えることもでき、反対に別属である可能性も考えられました。

史上最大級のティラノサウルス・レックスとして知られるスコッティやスーと比べると、ジェーンは単に小さいだけでなく、全体のシルエットがやや足長で、顎に並ぶ歯の数が多い点も特徴的でした。

この“小さな暴君”の登場によって、同様の化石を新属ナノティラヌスとみなすべきか、それともティラノサウルス・レックスの幼体と捉えるべきなのか……議論は再び燃え上がることになったのです。

2000年代に入ると、徐々にティラノサウルス・レックスの幼体説が有力になってきました。

ジェーンは2001年に発見され、4年間の準備期間を経て、2005年に米国イリノイ州のバーピー自然史博物館で公開されました。展示に合わせて学術会議も開催され、古生物学者たちは“ミニ暴君たち”の化石をティラノサウルス・レックスの幼体とみなす、という結論に達しました。反対意見を持つ研究者も数名いましたが、全体としては過半数の支持を集める結果となりました。

多種多様な論議が繰り広げられてきました。その一例を紹介。

しかし、疑問は残りました。

ナノティラヌス・ランセンシスとされた化石では、上顎の片側に14~15本、下顎の片側に17本の歯が並びます。ところが、一般的なティラノサウルス・レックス成体の歯は、上顎片側で11~12本、下顎片側で11~14本程度とされています。この違いから、「やはり別の生物なのではないか」という指摘が再び浮上したのです。

これに対して、次のような反論が示されました。

まず、同じティラノサウルス科であるゴルゴサウルス・リブラトゥスでは、成長に伴い歯の本数が減少することが知られています。つまり、年齢によって歯の数が異なるのは珍しくない、という例です。

一方で、ティラノサウルス科のタルボサウルス(ティラノサウルス・バタール)では、幼体・成体ともに歯の数が変わらないとする研究もあります。ただし、もともとの本数には個体差があり、多い個体・少ない個体が存在するとも報告されています。

これらを踏まえると、ナノティラヌス・ランセンシスの化石において歯の本数が多いという事実だけでは、「別属である」と断定する材料にはならない、という結論が導かれました。

また、研究者の間では、手の相対的な大きさの比較や、脳の空洞(脳函)モデルを用いた形態比較など、歯列以外の特徴についても議論が続けられました。しかし比較可能な標本数が極めて限られているため、分類学的に明確な結論を出すことは難しい、という見方が根強く残っていたのです。

2020年になって、大きな分析が発表されました。

2020年に入り、新たな研究が発表され、議論は再び活気づきました。この研究は「ミニ暴君」たちの骨の断面を極めて精密に分析したもので、最終的に彼らをティラノサウルス・レックスの幼体と結論づけています。

その内容で特に注目されたのは、レックスの成長率が一定ではなく、年齢とともに変化し、さらにはエサが乏しい時期には成長そのものを遅らせることができた、という点です。

なるほど、これまであまり考えられてこなかった視点です。ティラノサウルス・レックスが繁栄した期間は約200万年に及びますが、その長い時間の中には、十分に獲物を得られず栄養状態が悪化した時代があった可能性もあります。ジェーンをはじめとする“ミニ暴君”たちは、そうした不遇の時期を生きていたレックスだったのかもしれません。あるいは単に狩りが不得手だった個体なのかもしれません。想像は尽きませんね。

1980年代にはほぼ五分五分だったこの論争も、年を追うごとに徐々に「ティラノサウルス幼体説」へと傾いてきました。そして今回、ようやく決着したのかもしれません。今回の研究は骨の断面構造に着目したものでしたが、化石として比較的多く見つかる“歯”を対象にした研究が進めば、さらに興味深い知見が得られるのではないでしょうか。

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