

こちらは通称「海サソリ」と呼ばれる、米国ニューヨーク州産ユーリプテルスの完品個体です。頭部・左右の象徴的なパドル、節のある体節、鋭い尾剣まで、主要要素が揃った理想的な標本で、コレクターにとってまさに“出会える時に手にしておきたい”グレードです。
カーブ計測で約15センチ近い堂々としたサイズを誇り、外骨格の細部のディテールまで鮮明に残る、数あるユーリプテルス標本の中でも群を抜いた存在感を備えています。

ユーリプテルスには複数の種が知られていますが、本標本のレミペス(remipes)は、その中でも特によく研究され、ニューヨーク州のバーティ層から産出する代表的な種です。
ユーリプテルス属自体はオンタリオ州や東欧からもまれに発見されますが、ここまで整った完品のレミペスは流通量がきわめて限られ、標本価値は年々高まっています。

ユーリプテルスは海サソリ類の中で最も知られた存在で、古生代シルル紀(約4億3,200万〜4億1,810万年前)の海で食物連鎖の上位を担っていたと考えられる捕食者です。
海サソリ類はすでに絶滅していますが、クモやサソリなど陸生節足動物の遠い近縁にあたり、古生代の生態を知る上で欠かせないグループです。なお、カブトガニとは異なる系統で進化したことが分かっており、「海の生物史」を語るうえでも非常に興味深い存在です。
海の生物史については、「およそ5億年にわたる海の生物の歴史をCGで振り返る」を御覧ください。海サソリも登場します。

ユーリプテルスは三葉虫と同じく硬い外骨格(クチクラ)を持つため、化石として残りやすい一方で、“完品”は極めて出にくいことで知られます。そのため、全身が揃った標本はコレクターから熱い視線を集める、研究価値と鑑賞価値を兼ね備えた特別な一品です。
また、ユーリプテルスと言えば名前の由来にもなっている、翼のように大きく広がるパドルが象徴的。このパドルを巧みに使い、水中を滑空するように遊泳していた姿が目に浮かぶようです。

尾剣と呼ばれる鋭い棘は、ユーリプテルスの特徴的な武器の一つです。現生のサソリのように毒があったかどうかは定かではありませんが、防衛・威嚇・捕食補助など、複数の用途が想定される未解明の器官です。まだまだ謎の多いロマンあふれる生物です。

ご覧のように、幅広で輪郭が明瞭、さらに頭部とパドルが美しく強調された非常にバランスの良い姿勢で化石化しています。ポーズの良さは標本価値を大きく左右しますが、本個体はまさに展示映えする理想的なシルエットを備えています。

裏面です。ニューヨーク州産シルル紀三葉虫の収集家なら馴染み深い、グレイッシュで上質な母岩が特徴的です。きめ細かく締まった粘土質の岩質は、ユーリプテルスの外骨格がより美しく見えます。

側面から撮影したカットです。先ほどユーリプテルスはカブトガニとは異なる系統の生物とご紹介しましたが、両者にはただ一つ共通点があります。それが書鰓(しょさい)と呼ばれる特殊な呼吸器官です。
本を重ねたような形状の鰓板に海水が入り込み、内部の血管が酸素を吸収するという仕組みで、脚の動きによって半自動的に呼吸が行われていたと考えられています。この書鰓を持つ生物は現生ではほぼカブトガニのみであり、その意味でもユーリプテルスは“古代に消えた呼吸システム”を伝える貴重な証人と言えるでしょう。

母岩を含めて左右162ミリ、本体はカーブ計測で約147ミリ。ユーリプテルスとしては大きめの部類に入る存在感のあるサイズで、特に体幅が広く、黒色のクチクラは、非常にインパクトがあります。

100円硬貨との比較です。大きな頭部、シンボルとなる左右のパドル、節立った体節、鋭い尾剣、外骨格に残された精緻なパターンなど、ユーリプテルスの魅力が詰まった、極めて上質なレミペス標本です。

ユーリプテルスの復元イラストです。



価格:¥180,000
商品ID:ot4325
時代:古生代シルル紀(4億4600万 -- 4億1000万年前)
産地:New York, U.S.A.
サイズ:本体カーブ計測14.7cm 母岩含め全体16.2cm×9.3cm×厚1.7cm
商品説明:頭部・パドル・尾剣が揃った完品……玉数が限られた、ユーリプテルス・レミペス(Eurypterus remipes)のトップグレード標本
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