

こちらは、秋田県田沢湖周辺から岩手県阿仁地域にかけて分布する、新生代・中新世の地層から産出した木の葉の印象化石です。白くきめ細かな母岩に、葉の輪郭が明瞭に残されています。
葉は全体的に楕円形で、基部はやや丸みを帯び、先端はやや尖っています。主脈が強く、側脈は羽状に分岐し、葉の縁にはわずかに鋸歯(ギザギザ)が認められます。これらの特徴から、ブナ科の植物の葉である可能性が高いと考えられます。この地域では、同様のブナ属の葉化石がたびたび発見されています。
本標本は、ミズナラなどの鋸歯が明瞭な葉とは異なり、より滑らかな縁をもつブナ型の形状を示しています。

葉がこのように黒く残っているのは、おそらく炭化によるものです。この現象は「炭質化(たんしつか)」と呼ばれ、焼け焦げたわけではなく、葉に含まれていた有機物が分解されずに、炭素だけが濃縮して残った状態です。
現象的には木炭の形成過程と似ていますが、炭質化はそれよりもはるかにゆっくりと、数百万年という時間をかけて進行したものです。
流れをコラム「湖底に眠る葉……木の葉の化石ができるまで」にまとめています。ぜひご覧ください。

中新世当時、日本は日本海の拡大によって形成された内陸の盆地地帯でした。その内部には大小の湖や湿地が発達していたと考えられています。
湖底には、近くの火山から舞い降りた火山灰を含む細粒の泥(凝灰質泥岩)が、長い時間をかけてゆっくりと堆積していきました。
水面に落ちた葉が静かに湖底へ沈むと、そこは嫌気的(酸素の乏しい)で静穏な環境であったため、葉は分解されることなく泥に覆われ、その表面だけが炭素膜(炭質膜)として残ったと考えられます。
これほど美しく葉の形や葉脈まで残る印象化石は、きわめて良好な保存条件がそろわなければ形成されません。

裏面です。実物は写真以上に、きめ細かく緻密な岩質をしています。

側面からご覧いただくと、凝灰質の泥岩が何層にも重なって堆積している様子がよく分かります。粘土鉱物を多く含む泥岩特有のきめ細かさと、層状の構造がはっきりと確認できます。

左右約11センチ弱の母岩の上に、長さ約7センチの葉の化石が明瞭に保存されています。

100円硬貨との比較です。秋田県田沢湖周辺の中新世の地層から産出した、見事に炭化したブナ(Fagus)と思しき葉の化石です。


価格:
商品ID:ot4293
時代:新生代第三紀(6600万--260万年前)
産地:秋田 日本
サイズ:本体幅7.4cm 母岩含め全体10.8cm×7.4cm×厚2.1cm
商品説明:国内マニアックシリーズ!秋田県田沢湖周辺の中新世の地層から産出した、見事に炭化した ブナ(Fagus) と思しき葉の化石
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