石炭の成り損ないなんて言わないで!?珪化木のお話

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 カテゴリ:化石ニュース 作者:

皆さま、化石セブンに美しい木の化石「珪化木(けいかぼく)」の化石が入荷してまいりました。

本日撮影しましたので、すぐご紹介できるかと思います。

マダガスカル産の珪化木1

 

さて、今日は珪化木(けいかぼく)と石炭のお話を一つ。

 

「珪化木」は、植物が石化した一形態を指していいます。

珪化木の「珪」は、ケイ酸の「珪」。

ケイ酸(SiO2)とはケイ素と酸素、そして水素の化合物の総称で、土の成分の60~80%を

占める成分なんですが、あまりなじみがないですよね。

 

でもケイ酸は、地球上のあらゆる生物の細胞に入っている物質なのです。

人間も然りです。

 

さて、珪化木がどうやってできるかに話を移しましょう。

古代の木がいろんな理由で土砂に埋もれて、地層から圧縮を受けます。

そこへケイ酸を含んだ地下水が、徐々に木の細胞の中を満たしていくのです。

長い期間を経て、木の中身は、二酸化ケイ素という物質に置き換わっていきます。

 

二酸化「ケイ」素に変「化」した「木」。

だから、珪化木です。

 

二酸化ケイ素が結晶化すると皆さんよくご存じの「石英(せきえい)」という物質に変わります。

石英は六角形の形をした白い色の結晶を形作るのですが、

白色だけでなく、黒や紫、時には黄色といった色も出てくるのが特徴なのです。

 

石英の黄色や黒色も鑑賞できる珪化木

 

特に、石英の中でも無色透明なものは「水晶」と名前がつき、パワーストーンとして

大変人気があります。

 

石英は4月の誕生石でもあり、「神秘、完璧、冷静」といった意味をもっています。

 

さて、こんな神秘的な物質が、細胞全てで満たされた木、「珪化木」。

とっても素敵ですよね。

 

が、しかし!産業の視点からすれば、珪化木を少~し邪魔者扱いする声もあるのです。

なぜか?

 

それは石炭の発掘と関係があります。

 

 

いわずと知れた化石燃料「石炭」。

石炭は、人類が発展していく上で欠かせない物質で、現在でも世界中の

あちこちで発掘され、燃料として使われています。

 

石炭は、主に3億6700万年前から2億8900万年前、大森林が広がっていた石炭紀

といわれる時代(古生代ペルム紀とデボン紀の間の時代)に、たくさんの植物が

腐ることなく地中に埋もれて、最終的に石炭化した物質です。

 

よく考えると、石炭だってりっぱな植物化石なのですよね。

でも、人類は燃料として使ってきたわけですから、石炭を「化石」として珍重する

といった認識はありません。

鑑賞していても、あまりきれいではないですしね・・・。

 

では、みなさん、珪化木と石炭の違いは何でしょう?

どちらも植物化石なのですが、用途と最終形態があまりに異なります。

 

シンプルに言うと、木の細胞の中に主にケイ素が満たされたら珪化木、

主に炭素が満たされたら石炭ということになります。

 

厄介なのは、半々くらいで化石化したやつもいるということ。

要は、石炭になりそうだったのに、ケイ素も多く、結晶化が進んで固くて固くて・・・中途半端!

みたいな植物化石が多く存在するということです。

 

石炭を発掘する現場で、珪化木が傍で見つかるのはよくあることのようで、

固いことから発掘のさまたげになり、炭鉱者を悩ます原因になっているようです。

 

そういった理由から、珪化木のことを、「石炭に成り損ねた木」なんて

呼ばれることもあります。

 

が~ん!!ですよね。

気持ちは分かりますが、何ともショックなネーミングです。

 

産業的価値からすると、石炭のほうが優位なのかもしれませんが。。。

炭鉱所の傍らには、鑑賞用には適さず、そして石炭になることもなかった

珪化木のかけらたちが積まれている現実もあるようです。

木の皮もナチュラルに保存された珪化木

 

珪化木からすると、「固いからって見捨てないでっ」というところでしょうか。

 

ですから、鑑賞用の化石となった珪化木は、かなりのセレクションを経て

商品化した、選ばれし者たちともいえます。

 

鑑賞に値するほどの珪化木ばかりが産出されればよいのですが、

年輪が確認できないとか、結晶化が進んでおらず色彩のバリエーションが貧弱である

などといった理由から選ばれないものも多いのです。

 

化石の市場に出た珪化木は、エリート中のエリートともいえます。

珪化木のエリート中のエリート

 

「石炭になり損ねた木」なんて言わないで!

と、彼らはきっとささやいていることでしょう。

 

珪化木は世界各地で発見され、ここ日本でも見られますが、有名な産地は

主に、ブラジルやアメリカ、マダガスカルといったところです。

 

本日撮影したのは、マダガスカル産の珪化木で、色彩が豊かてきれいです。

黄色、ブラックといった石英で表現される色と、ビビッドな赤の脈のコントラストが

映える、洗練された標本です。

 

もうすぐアップしますので、気になった方はトップページでチェックしてみてくださいね!

年輪が確認できる珪化木