この褐色の母岩の中央に見える鱗は、「パレオニスクム」という名で知られる魚類のものです。パレオニスクムは、約2億6000万年前から2億5000万年前(古生代ペルム紀)に生息していた絶滅古代魚です。魚の化石はさまざまな地域から採取されますが、古生代の標本となると、その数はぐっと少なくなります。新生代、古くても中生代のものが大半でしょう。
ペルム紀末には、地球史上最大の絶滅イベント(当時の生物の9割以上が死滅)があったとされ、それ以前の魚類は、現生の魚類とはまた異なる形態をしていました。パレオニスクムもその一つです。化石をご覧いただきつつ、その特徴をご紹介していきます。
アップで撮影しました。こちらは魚体のミドルセクション(胴体中央部)の部分化石です。
パレオニスクムは、古生代ペルム紀の川や湖にすんでいた肉食性の魚でした。体長は大きくても約30センチほどで、流線型の体に、深く二叉に分かれた尾びれ、高く伸びた背びれを持ち、素早く泳ぐことができたと考えられています。
特徴的な鱗が明瞭に保存されています。境界部分の母岩を見ると、母岩を丁寧に剥ぐようにクリーニングされ、内部から化石が現れたことがよくわかります。
パレオニスクムは、ヨーロッパや北アメリカなどを中心に化石が発見されていますが、特に有名なのがドイツの銅頁岩層(Kupferschiefer)から採取される標本です。本標本もその一つで、特徴として挙げられるのが、この非常に深みと照りのある褐色の色合いです。
パレオニスクム…ちょっと舌を噛みそうな名前ですが、ギリシャ語の「古い(palaiós)」と「魚(onískos)」に由来します。1818年、フランスの博物学者ブランヴィルによって命名されました。
この魚は、古生代の地層から発見されたことに加えて、現代の多くの硬骨魚類とは異なる、ある“古い特徴”を持っているのです。
裏面もご覧いただきましょう。頁岩らしく、非常にきめ細かな質感が見て取れます。一般的に頁岩といえば乳白色や茶系の色味が多いですが、この標本は色合いが異なり、銅を含むことで生まれる独特の質感が、他にはない味わいを醸し出しています。
側面から撮影しました。非常に薄い化石ですので、丁寧にお取り扱いください。
パレオニスクムが持っていた“古い特徴”とは、原始的な浮き袋を備えていたことです。
浮き袋とは、現在の多くの魚類が持つ器官で、空気を体内に貯めることで水中での浮力を調整し、一定の深さに留まることができます。この機能により、浮くためのエネルギーを節約でき、活発な活動が可能になります。
たとえば私たち人間が水中で浮こうとすれば、足をばたつかせたり、腕を使ったり、あるいは浮き輪などの道具を用いる必要があります。魚にとって、浮き袋はそれに相当する“内蔵の浮き輪”のようなものです。
パレオニスクムは、初めて原始的な浮き袋を持ち始めた初期の魚類の一つと考えられています。ただし、現代の魚類が持つ浮き袋ほど進化したものではなく、口と直接つながっており、呼吸と浮力調整の両方を同時に担っていたとされます。このような構造は、「開放性浮き袋」の前段階と位置づけられます。
現在の魚類から見れば、未完成で効率の悪い浮き袋ですが、当時としては画期的な機能だったに違いありません。水中での姿勢を保ちやすくなったことで、獲物の捕食により多くのエネルギーを使えるようになり、活発な動きが可能になったと考えられています。
左右の全体幅は約185ミリ、本体(化石部分)は約66ミリです。
100円玉との比較写真です。付属のスタンドを用いて展示しています。こちらは、原始的な浮き袋を持っていた“当時の新型魚類”パレオニスクムの鱗の化石です。
価格:¥8,900
商品ID:ot4176
時代:古生代ペルム紀(2億8900万 -- 2億5100万年前)
産地:Glucksbrunn, Bad Liebenstein, Thuringen, Germany
サイズ:本体直線計測6.6cm 母岩含め全体18.5cm×13.4cm×厚0.9cm
商品説明:原始的な浮き袋を持つ、ペルム紀の絶滅魚類 パレオニスクム・フレイエスレベニ(Palaeoniscum freieslebeni)の化石
このウィンドウを閉じる