

写真右上の凸凹の箇所をご覧ください。驚くことなかれ、こちらはなんと……エドモントサウルスの皮膚の印象化石です。
「印象化石」とは、生物の体の表面構造や形態が、泥や砂などの堆積物に転写され、化石化したものを指します。実際の皮膚そのものが残っているわけではありませんが、表面の鱗模様や質感が極めて精密に保存されており、生前の姿を具体的に再現できる貴重な資料となります。

その部分をクローズアップしました。「恐竜の皮膚が化石になるのか!?」と思われた方も多いでしょう。答えは……Yesです。
実際、このエドモントサウルスは、骨格だけでなく、皮膚表面の細かなモールド(型)や、場合によっては筋肉の痕跡まで保存された個体が複数知られており、いわゆる「恐竜のミイラ」として知られています。
ただし、「ミイラ」といっても、実際に生体の皮膚組織そのものが残っているわけではありません。皮膚の凹凸や外形が、粘土質の堆積物に写し取られたものです。したがって、DNAなどを採取できるわけではありません。

有名な皮膚化石のひとつに、アメリカ自然史博物館(American Museum of Natural History)に所蔵されている標本番号 AMNH 5060 があります。これは、米国ワイオミング州付近の白亜紀末期の地層(ランス層)から、1908年に発見されたエドモントサウルスの化石です。
この個体は、骨格の大部分が連結した状態(3次元的な配置を保ったまま)で保存されており、全身にわたって皮膚表面の痕跡が残されています。表面には細かな鱗状の凹凸が確認でき、当時の皮膚の質感を今に伝えています。
このような背景から、エドモントサウルスの皮膚化石が存在することは、古くからよく知られた事実となっています。

エドモントサウルスは、白亜紀末(約6,600万年前)に北米西部へ生息していた大型の草食恐竜です。「ティラノサウルスのランチ」とも呼ばれるように、常にティラノサウルス・レックスなどの強大な捕食者から狙われる存在であり、いわゆる逃走動物(プレイ・アニマル)だったと考えられています。
巨体ながらも決して鈍足ではなく、時速およそ45キロで走行できたという説があります。これは、ノースダコタ州で発見された、筋肉や腱が三次元的に保存された標本「ダコタ(Dakota)」の分析から推定されたものです。

こちらは裏面です。皮膚の印象化石は確認されませんが、非常にきめ細かな岩質であることがわかります。
皮膚の化石が保存されるには、遺骸となったのち、短期間のうちに酸素の少ない(嫌気性の)深い水底などに埋没する必要があります。このような特殊な条件がそろうことで、皮膚表面の凹凸や鱗の模様が、堆積物に転写されるのです。
複数のエドモントサウルスで、皮膚の痕跡が残る骨格が発見されていることを踏まえると、集団でこのような環境に遭遇した可能性が高いと考えるのが妥当でしょう。

側面から撮影しました。おそらく、粘土鉱物を多く含む堆積物が固結してできた頁岩(けつがん)だと思われます。粘土鉱物は非常に表面積が大きく、周囲の粒子や有機物にまとわりつく性質を持っています。そのため、空気の通りにくい膜を形成し、内部の分解を抑える効果があると考えられます。上質な化石が頁岩から採集されることはよくあります。

左右幅は約43ミリです。

100円硬貨との比較写真です。エドモントサウルスの明瞭な鱗(皮膚の凹凸)が確認できる、たいへん希少な標本です。

エドモントサウルスの復元イラストです。


価格:
商品ID:di1760
時代:中生代白亜紀(1億3500万 -- 6600万年前)
産地:米国ヘルクリーク累層
サイズ:4.3cm×3.9cm×0.9cm
商品説明:レア!鱗の凹凸が明瞭に確認できる、エドモントサウルス(Edmontosaurus)の皮膚印象化石。Dawson County, Montana, U.S.A.
この商品は売却済みです。
このウィンドウを閉じる