この丸く大きな、どこか愛嬌のある三葉虫の種小名は「ラナ」。ラナとはラテン語で「カエル」を意味します。まるでよく太ったカエルを思わせる姿に、心を奪われたコレクターも少なくないでしょう。
かつては「ファコプス・ラナ」として流通していましたが、その後、分類学の見直しにより属レベルで再編され、現在は エルドレッジオプス・ラナ(Eldredgeops rana) が正式な学名となっています。
ぱっと見、「モロッコ産のファコプスによく似ている」と思われた方もいるかもしれません。ご明察です。デボン紀当時、北米大陸プレートとアフリカプレートは接しており、そのため両地域で同じ種類の三葉虫が見つかるのです。
ファコプス・ラナの代表的な産地はペンシルベニア州ですが、実はオハイオ州産のものも少なくありません。とくに北西部のシリカ層(Silica Formation)はラナの名高い産地で、本標本もそのシリカ層から発見されたものです。
ラナといえば、このユニークで大きな頭鞍部、そして種小名の由来にもなった大きな複眼。じっと見ていると、たしかにカエルの顔のように見えてきませんか……え、見えない?
ラナの化石は、しばしばこのように丸まった姿で発見されます。これは外敵から身を守るための行動で、硬い外骨格を盾にして腹側の弱い軟体部を守っていました。
この時代、ラナにとっての天敵といえば、渦巻き状の殻をもつゴニアタイトやオウムガイなどの頭足類、そして板皮類をはじめとする強靭な顎を備えた古代魚類たちでした。彼らに襲われればひとたまりもありません。だからこそ、ラナは現生の甲殻類と同じように、硬い背中の外骨格を盾とし、体を丸めて攻撃から身を守ったのです。
尾部まで外骨格がしっかりと覆っているこの個体は、ラナの中でもさらに細かく、亜種 crassituberculata(クラッシトゥベルクラータ) まで同定されています。舌を噛みそうな長い名前ですが、その意味は「太く小さな突起を持つ」というもの。実際、通常のラナと比べると、体の随所に細かな突起が確認でき、明らかに装飾的でゴツゴツとした質感があります。
興味深いことに、このクラッシトゥベルクラータは、特に「丸まった姿」のまま化石化している例が多い点です。もしかすると、外敵に対して人一倍慎重に身を守る性質をもった、用心深い三葉虫だったのかもしれませんね。
手のひらにずしりと伝わる重量感、そして圧倒的なボリューム。これまで数多くの三葉虫を扱ってきましたが、これほどの大きさで、しかも“丸まった姿(エンロール姿勢)”をとっているものは、非常に珍しいです。モロッコ産のドロトプスを彷彿とさせます。
なんとも大きな複眼です。きっと相当に広い視野を持っていたのでしょう。危険が迫っていないか、絶えず周囲を見回していた姿が、目に浮かびます。
クラッシトゥベルクラータは、一般的なラナと比べると、サイズ以外の形態はよく似ていますが、より丸みを帯び、全体にボリューム感があり、さらにゴツゴツとした質感が目立ちます。同一種における地域的な変異や、進化の多様性を示すうえで、きわめてわかりやすい一例ではないでしょうか。
複眼部をクローズアップしました。一つひとつのレンズが鮮明に残されています。
側面から見ると、体節が重なり合うように連なっている様子がよくわかります。
反対側の複眼も、レンズひとつひとつまで鮮明に確認できる保存状態です。
ご覧の通り、どの方向から観察しても保存状態に遜色はなく、全体としてきわめて良好な状態を保っています。
裏面はややラフながらも平らに整えられており、この面を下に据えて展示すると安定します。
背周りの計測値はおよそ96ミリに達し、三葉虫としては非常に立派な標本です。
100円硬貨との比較写真です。保存状態、ラナの中での特異性、希少価値、そしてサイズ……そのすべてを兼ね備えた、まさにコレクターズアイテムと呼ぶにふさわしい一級の標本です。
価格:
商品ID:tr1337
時代:古生代デボン紀(4億1000万 -- 3億6700万年前)
産地:New York, U.S.A.
サイズ:本体カーブ計測9.6cm
商品説明:カエルに似ている?保存状態・希少性・サイズ、すべてが揃った……三葉虫コレクター注目の標本、エルドレッジオプス・ラナ・クラッシトゥベルクラータ(Eldredgeops rana crassituberculata)
この商品は売却済みです。
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